ハードボイルドごっこ

港には今夜も100万ドルの夜景が煌めいている。

ホテルの最上階の部屋からそれを見下ろしながら、俺はブログの最初の記事を書き始めた。

こんな港町は探偵映画にうってつけのロケーションで、主人公の事務所は場末の雑居ビルの3階とかにある。

探偵社の主な仕事は浮気調査だ。

警察が解決できない刑事事件を追うのはフィクションの世界の話にすぎない。

夜の街の夥しい酒場で、今夜も新しい恋が生まれ、不倫の愛が語られる。

今宵、俺はイマジネーションの中で探偵になり、秘密の恋人たちを追尾する。

海の見えるレストランでワインを飲みながら楽しそうに過ごす彼らを、俺は隅の席から隠しカメラに収める。

カメラは眼鏡の中に仕組まれており、傍でみていても隠し撮りとは気づかれない。

食事を終えた彼らは埠頭を散歩し、口づけする。

俺は物陰から夜間撮影のできる一眼レフでその光景を撮った。

その後、彼らはタクシーを拾ってラブホテルに向かった。

俺はつかず離れずの車両尾行でそれを追い、ホテル入りする決定的シーンを捉えた。

・・・・ん?

空想に耽っていると酒とスルメがなくなってしまったようだ。

今からコンビニに行って買ってくる。